➖山で学ぶ2日目
@野営箭山
フィールドワークや木工教室といった自然の中で学びながら山の恵みを感じられる体験を用意した二日目。あたたかだった初日と打って変わって、冬の訪れを告げる寒空となりました。
自己紹介を終えた後、八面山の中腹にあたる会場「野営箭山」へ移動しました。
大地の再生
大地の再生とは大地の血管である水や空気の流れなどに注目し、環境を再生する手法のこと。
人の体が空気と血液の循環を必要とするように、大地にも空気と水の循環が大切。現代の土木の構造は排水を流す視点はありますが空気を流す視点が残念ながらありません。空気を流す視点を取り入れて水の通り道を整えることが生態系の回復=環境改善につながると轟さんが図をもとに解説します。
フィールドワークその1|桜の木のふもとに点穴を掘ろう
大地をスコップで掘って小さな穴を開けるだけで、水と空気の流れが生まれて、微生物が働き始め、土が呼吸を始め、土も、草木も健康になります。枝の分かれ目である関節地点の下を掘り、掘った中に炭を入れ、枯葉(有機物)を被せます。パッと見て大きな変化はありませんが、次第に土が変わり、土の上にある上物にも変化が現れるそうです。
フィールドワークその2|草を味方にする風の草刈りをしよう
「草刈りといえば根から刈りがちですが、伸び切った草は茎の方が硬く作業が大変。草に対して風で揺れる高さで刈ると、刈ったところから柔らかい芽が伸びるので後の手入れが楽になります。」地に光が当たるように、風が流れるよう下から刈りあげるのもポイントとのことです。
フィールドワークその3|風の通り道を作ろう
周辺を歩き、会場周辺の状況を観察して見立てを行いました。※「見立て」というのは「大地の再生」視点からその土地を診断し、処方をアドバイスすること。山の中に入って苦しそうに絡まりあったツルをとったり、空気を通す場所を感覚を頼りに作ったりして、空気を流す作業をしました。
グリーンウッドワークでスプーン作り
グリーンウッドワークとは身近な森で伐ったばかりのやわらかい生木を使い、手道具で割ったり削ったりして暮らしの道具を作る木工のこと。
ファンタジーな世界観を放つ四季の丘公園内の小人の小屋の前で、八面山で採れたソメイヨシノを材木に「カレースプーン」を作りました。
「機械がなかった時代、人々は暮らしのために木を切り自分の手で家、家具、食器などあらゆるものを作っていました。日本人も昔は自分のものは自分で作っていた。和盆なんかはその最たるものです。ちなみに「アルプスの少女ハイジ」のおんじの暮らしはグリーンウッドワーカーそのものです。」
そう話す伊藤さんは、スプーン作りの流れとみなさんに座っていただいた作業台「削り馬」、用途ごとのナイフの使い方を説明してくれました。
割る、削る(はつる)、切る、削ぐ(そぐ)、刳る(くる)。
日ごろあまり持たない道具(斧やドローナイフ、フックナイフ)を使い黙々と生木と向き合う作業は、一度味わうと忘れられない心地よさ。樹皮の硬さや木目の流れなどナイフを通すと思いもよらない発見があります。中には「地道な作業は向いていないと思っていたんですが、ハマりますね!」と笑顔になる方もいました。
お手本と何度も見比べてナイフの入れ方を確認しながら進めます。
目的に向かう楽しさを体で心で感じられるのが手道具のモノづくりです。機械加工にはない樹木との対話を存分に味わっていただけたのではと思います。
仕上げはざらざらした乾燥させたムクノキの葉で磨き上げます。
木の表情に加え、長さやカーブにおいても作り手の個性が現れたスプーンが出来上がりました。
ゲストプロフィール
・轟理子さん
その土地に合う環境再生手法で傷んだ自然環境の再生と循環を行う。大地の再生九州支部代表
・伊藤高広さん
宇佐市在住。写真スタジオを営みながら、グリーンウッドワークの講座を開講。
https://www.instagram.com/akai_ribbon_gww/
最後に講師の方より感想を頂戴しました。
大地の再生 轟さん
大地の再生で伝えている一部を体験してもらいました。木々の周りに植物が蔓延っているところも少し手を入れただけであっという間に風が通るようになりました。
会場は山の中腹ということで斜面の切れ目に圧がかかっているので、圧抜きがこのあとの大事な作業です。今はコンクリートのU字溝が入っていますが時間をかけながら一つずつ外していきゆっくり良い環境へと整えていってほしい。
今日お伝えしたことは移植ゴテとノコ鎌があればどこでもできる作業です。ぜひご自身のフィールドで試してみて。自然は必ず答えてくれます。自分も自然も心地よく。
グリーンウッドワーク 伊藤さん
山を学ぶフェスにお呼びいただきありがとうございました。
スプーンはシンプルなカトラリーですが、様々な要素が詰まっています。山の恵みを感じて身の回りの道具ができる過程を楽しめたのではと思います。ハマった方はぜひ今後もワークショップにご参加ください。
八面山活性化協議会 久保さん
肌寒く過酷な天候の中、ご参加いただきありがとうございました。
スタッフも初めての取り組みでしたが皆様の楽しむ姿を見られ、非常に楽しかったです。これからも八面山でイベントをやっていきたい。情報発信にも力を入れますので、ぜひ奮ってご参加ください。
八面山の山頂を背に、みなさんとても良い笑顔です。
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森や山のことを聞いたり、体験したりと、子供たちから大人までが楽しみながら学ぶ二日間が幕を閉じました。
主催より
トークショーを真剣に聞いてくれる方や芝に寝っ転がってゆっくりする方、マルシェで買ったお弁当や飲み物を片手にお話をする方、走り回ったり転げ回ったりしている子どもたち。この光景を見ることが出来たこととても幸せでした。
トークショーやワークショップの後に個別に質問をされていたり新たな出会いが生まれていて自然の中でお仕事をされている方をご紹介することが出来てとても良かったです。
ここが始まりで、今後、やまなびフェスやややまのがっこうをどのように展開していくのか。八面山活性化協議会として、考え、行動し、前に進んで行きたいと思います。
やまなびフェスに来て頂いたみなさま、数あるイベントの中から、このイベントにお越し頂きありがとうございました。
また、トークショー登壇者、音楽演奏者、ワークショップ出店者、マルシェ出店者の方々、スタッフの皆様に重ねてお礼を申し上げます。
協力団体
後援:中津市
協力:地域おこし協力隊 その他